美杉というところに行って来ました。 …という話の続きです。 無理に引っ張るほどのネタでもないんですが、他に書くこともないので、さ、頑張りましょう。 前回 、4つのミッションのうち、何とか半分までクリアしたというところまで話が進んでいたかと思うんですが、次に待ち受けているのが最大の難関と目されている、薬注ポンプの取替という任務であります。 ヤクを注入するポンプ。 そういう役割の機器であるわけですが、今回、注入されることになっているヤクは次亜塩素酸ナトリウムというものである為、別名・次亜注入ポンプと呼んだりもします。 アジがさほど好きではない僕は、次亜 (じあ) もあまり好きではなかったりするんですが、仕事となると、次亜でも何でも注入しなければならないのが辛いところでありますなぁ。 そういえば 「ラブ注入」 をお仕事にしていた人は完全に消えちゃいましたが、とまあそんなことで、とりあえず頑張りましょう。 今回の話は文字だけでは説明しにくいので簡単な絵を書いてみたんですが、
戻すだけなら簡単。そう思っていたんですが、これがなかなかの難工事でありました。 頑張って吸込側のホースを繋いだんですが、そこから次亜がダダ漏れ。 そう言えば、さっき、コネクタが 「バキッ!」 とかいって、折れちゃったんでしたっけ? 駄目じゃん! 幸い、新しいほうのポンプに付いてきたコネクタを使うことが出来て事なきを得たんですが、何とか頑張って元に戻して、あとは電源を入れるだけ。 ちょっと、ヤバイ領域に足を踏み入れてしまったかも知れないくらいの時間は止まっていたような気がしないでもないんですが、それはまあ、今からガンガン注入することによって、トータルで辻褄を合わせるとして。 ということで、電源投入。 ・・・・・。 ウンともスンとも言いません。 制御盤から40秒に1回、ぴょこんとパルス信号が出されて、それでビクっとして、中のダイヤフラムがパコっと動く筈なのに、ビクっとも、パコっとも言いません。 40秒に1回とか、まどろっこし過ぎるので、手動にして0.8秒に1回くらい、ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダとパルスを出してみたんですが、反応せず。 も…もしかして、古いポンプ、お亡くなりになっちゃった? 死因はよく分からんのですが、シーンと静まりかえっていて、息をしていないのは確か。 ま、もともと調子が悪かったから取り替えることになったんだと思うので、とどめを刺したとか、安楽死処分とか、結果的にそういうことになっちゃったのではなかろうかと。 それもまあ、運命っすよね。 安らかにお眠り下さい。 人の命に代わりは無いんですが、幸い、薬注ポンプには代わりがあります。 しかもピカピカの新品。 君の出番はもうちょっと先になるかと思っていたんですが、そうも言っておられなくなっちゃいました。 さ、今すぐに働け!
ということで、再び取替作業を開始。 ホースを外す度に次亜がダダ漏れになっちゃいますが、そんなことを気にしてる場合じゃねえ! とまあそんなこんなで、苦難の末、何とか新しいポンプで何とかなりそうな気がしないでもないところまで漕ぎ着けることが出来たんですが、とりあえず手動運転の100%出力でパコ・パコ・パコ・パコ・パコ・パコっと、次亜注入っ! これで何とかモトは取れるんじゃないかと思うんですが、ここまで来れば一安心。 あとは落ち着いて、パルス入力で自動で何とかする方策を
見つけてやれば大丈夫です。 ま、それは取扱説明書を見れば何とかなるんですが、とりあえずパルス入力の場合、この辺りを何とかすればよさそうな気がしないでもありません。
ということで、今日はスタンリー・タレンタインっす。 通称スタ・タレ。 兄のトミー・タレンタインはトミ・タレで、こちらはトランペットを吹いたりします。 ジャズ界のタレ兄弟として知られておりますが、この2人に直垂(ひたたれ)を加えて “世界3大タレ” と言ったりしますよね。 バカタレや、クソッタレといった強豪を抑えて、この兄弟がベスト3に食い込んだのは立派な功績であると思いますが、で、スタンリー・タレンタインと言えば、アメリカでは最も高いギャラを取る男として知られております。 『完全ブルーノート・ブック』 にそう書いてありました。 ま、ジャズの世界に限定した話なんでしょうが、日本での人気の度合いを考えると、ちょっと信じられない気もしますな。 ハロルド・ランドやチャーリー・ラウズよりは、ちょっと上と言った程度ですもんね。 ま、アメリカ人って、大衆迎合的で、能天気で、翳りのないキャラが好きだったりするので、まったく分からん話でもないんですが、対して日本のジャズ・ファンの間では、こういうキャラは馬鹿にされ、低く見られる傾向にあったりします。 が、実際に聞いてみると、ケレン味のない真っ当なスタイルの持ち主であることが判明したりして、個人的にはわりと好きだったりするんですが、今日はそんなスタ・タレくんの 『カミン・ユア・ウェイ』 というアルバムを取り上げてみたいと思います。 フロントに兄貴のトミ・タレを配して、リズム・セクションにはホレス・パーラン、ジョージ・タッカー、アル・ヘアウッドという、なかなかに真っ黒ソソられる布陣を擁しております。 『アス・スリー』 のトリオっすよね。 これだけの面子を揃えておきながら、本作は未発表のまま、オクラ炒り煮…、いや、お蔵入りになっていたそうですが、それが信じられないような素晴らしい出来に仕上がっているのかどうかは、聞いてみないことには何とも言えません。 ということで、聞いてみましょう。
1曲目、 「マイ・ガール・イズ・ジャスト・イナフ・ウーマン・フォー・ミー」 。 さほど有名ではない歌物ナンバーではないかと思われますが、 「私の女の子は私のためのちょうど十分な女性です」 っすか。 ぶっちゃけ、ちょっと不細工なんだけど、性格はめっちゃいいし、僕にとっては分相応だよね。 そういったところっすかね? ブサかわ好きの僕としては大いに共感が持てるんですが、曲のほうも親しみやすい旋律を持った、なかなかの佳曲だったりしております。 (前略) 優しいトーンを失わないまま、充分に骨太な感じとスイング感を獲得している。 スタンリーは軽い足取りでメロディーを奏で、やがて、トミーとパーランにフォローされ、簡潔かつ情熱的なソロに突入していく。 ジョージ・タッカーは動き回り、力強い支柱となっている。 でしゃばらないが非常に優れたベースラインで全体をドライブさせている。 そう、原文ライナーにあるようなプレイが展開されております。 by マイケル・カスクーナ (訳:赤塚四朗) っすな。 カスクーナは、カス食わない立派な評論家だったりするので、カスばかり食わせている僕ごときが付け加えることなど、何もなかったりするんですが、敢えて追記するなら、スタの後にトミのソロがあって、続いてパーランのピアノが出て来て、らんらららん♪ それくらいっすかね。 ぶっちゃけ、トミ・タレは “世界3大タレ” に算えられるほどの大物ではなかったりするので、この人のソロがちょっと弱い気がしないでもないんですが、パーランはいいっす。 長島スパーランドと同じくらい、いいっす。 この夏、 新機種 も出来るようなので、東日本の人たちも是非遊びに来て欲しいと思うんですが、で、最後にスタが再登場して、短いながらもイケてるソロを聞かせてくれて、でもって、歌心に溢れたテーマに戻って、おしまい。 いやあ、なかなかの出来でありましたなぁ。
ということで、次。 「ゼン・アイル・ビー・タイアード・オブ・ユー」 。 これまた、さほど有名ではない歌物ナンバーではないかと思われますが、 「そして、私はあなたに飽きています」 っすか。 「美人は3日で飽きる、不細工は3日で慣れる」 といいますが、倦怠感に溢れた珠玉のバラードに仕上がっております。 出だしはトミのほうのタレ、続いてスタのほうのタレが、それぞれワン・ホーンでメロディを吹くという、そういう趣向なんですが、トミ君のB級っぽさが、なかなかいい味を出していると思います。 (前略) トミーがメロディーとヴァースを演奏して始まる。 スタンリーが形式を整え、彼独特の美しいバラッド・ソロに入る。 トランペット・ソロもテナー・ソロもともに実に名状しがたいが、鋭く、ビタースウィートな切れ味を持っている。 カスクーナくん的には、そういう解釈になるようですが、いいっすよね、ビタースウィート。 正露丸糖衣って感じ? あれはスウィートからビターへの変異があまりにも豹変過ぎて、喜んで舐めていた子供が泣き出すレベルだったりするんですが、僕の子供の頃の苦い思い出でありますなぁ。 …とか言ってるうちに演奏のほうは終わってしまいましたが、ピアノのソロとかはなかったような気がする、ほんのちょっとした小さなプチ小品。 そういったアレでありました。
で、次。 「ファイン・リル・ラス」 は巧妙なマイナー・ブルースだ。 ジャズ・メッセンジャーズの手法に則ってダイナミクスがうねりまくるのである。 そんなふうに書かれていたので、ちょっと期待しちゃったんですが、ま、確かに巧妙なマイナー・ブルースであるな。 そういった感じはあるものの、ダイナミクスがうねりまくるという程ではないような? ま、スタ・タレのソロはこの上なくグルーピーで、臭さ満載で、たまらんっ♪ そういうアレだったりするし、それに続くトミ・タレもまずまずだし、以下、パーラン、ジョージ・タッカーと続くところは 『アス・スリー』 な黒さが充満しているし、でもって、ちょっと地味なテーマに戻って、おしまい。 うねるダイナミクスに過度な期待さえ持たなければ、充分にイケてる出来であった。 そのように評価していいと思います。 で、次。 「トーマス・ビル」 はトミー・タレンタインのオリジナル。 機関車で稼いだトーマスが、ついに自社ビルを建てた。 そんなサクセス・ストーリーを曲にしたものではないかと思うんですが、僕も自社ビルを建てるのが夢だったりするんですよね。 中にボディビルを入居させたりして。 が、よくよく考えたらマッチョな男とか、ぜんぜん好きではなかったりするので、速攻で退居させてやろうと思うんですが、24小節のバピッシュな曲で優れたソロが聴ける。 スタンリーが正統な初期R&Bスタイルを取り、背後でホレスがライオネル・ハンプトン・タイプのリフを付けている。 ボブ・ポーターが指摘したように、ここでのトミーのソロはファッツ・ナヴァロの強い影響が窺える。 タッカーとヘアウッドの簡単なステイトメントにフォローされ、パーランが凄いソロを取る。このトラックでは全員が上手く展開し巧みに構成されたソロを披露している。 そういったアレだったりするようです。 で、聞いてみたところ、確かに巧みな構成のソロだったりしたんですが、巧みなと言えば、 タクミナ 。 今回、僕が取り替えた次亜ポンプはこのメーカーの製品なんですが、TACMI=「匠」たくみは創意工夫の心を表し、NA=「自然」Natureは生命・自然の尊重を忘れることなく、安全と安心を提供するという思いが込められている。 ほぉ、匠ネイチャーだったんすか。 またひとつ賢くなりましたな。 個人的には 「たるみ姉ちゃん」 のほうがいいかな? そんな気がしないでもないんですが、変に引き締まっているよりは、ちょっとたるんでいるくらいのほうが親しみが持てて、いいっすよね。
ということで、次。 「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」 。 かなり有名な歌物ナンバーでありますな。 これの邦題がどうして 「やさしき伴侶を」 なのか、今ひとつよく分からなかったりするんですが、 こんな感じ の歌詞だったりするようです。 「私の男の子は私のためのちょうど十分な男性です」 を求めてるような感じ? 伴侶にするなら、お坊さんがいいな♪ …みたいな。 そりゃ、僧侶やがな。 で、カスクーナいわく、(前略) ソウルの欠けたシンガーたちに度々踏みにじられてきたが、ここではスタンリーが見事に再生させている。 これは彼の十八番だ。 そしてまた、バラッドの名手であることも証明している。 スタンリーは若い頃ベン・ウェブスターとドン・バイアスに大きな影響を受けたと公言している。 彼が真摯に学んだであろうことが良く分かる。 そういうアレであったりするようですが、パーランの弾く美しいピアノのイントロに続いて登場するテーマの旋律は、 「はるばる来たぜ函館〜♪」 っすよね、途中まで。 「イン・ア・センチメンタル・ムード」 や 「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームズ」 も同様で、世間では “函館フレーズ” と呼ばれている音階だったりするようですが、スタ・タレくんの吹きっぷりは確かにベンやドンの影響を強く感じさせますな。 ま、ドンのほうは聞いたことがないので、どんなバイアスなのかよく分からなかったりするんですが、魅惑のムードテナー。 その系列であると思っていいでしょう。 顔はちょっとゴツいんですが、根は優しいナイスガイなんでしょうな、スタ・タレくん。 このプレイを聞いていると、そんな気がしてくるんですが、続くパーランのソロも、あまりクドくない抑制の効いたものだったりして、しみじみと心に染みます。 背後で聞かれるジョージ・タッカーもジョー・タツっすなぁ。 とってもベースが上達しております。 とまあそんなことで、テーマに戻って、おしまい。
で、残すところあと1曲。 ここまで来ればもう、終わったも同然なんですが、 「ストールン・スイーツ」 はワイルド・ビル・デイビスのオリジナルだそうです。 さほどワイルドではない、ほのぼの系のハード・バピッシュなナンバーだったりするんですが、ここでのスタンリーのソロは決定的に素晴らしく、尽きることのないアイディアの連続である。 そう、カスクーナくんが評しております。 概ね同感なんですが、僕のアイディアとヤル気は尽きてしまったので、とまあそんなことで、今日は以上っす。
【総合評価】 お蔵入りになっていたのが信じられないような素晴らしい出来に仕上がっているのかどうかは、聞いてみないことには何とも言えないんですが、聞いてみたら仕上がっていた。 そんな1枚でありました。 侮れませんなぁ、スタ・タレも、オクラも。