THINGS ARE GETTING BETTER ALL THE TIME (PABLO)

J.J.JOHNSON & AL GREY (1983/11/28,29)

THINGS ARE GETTING BETTER ALL THE TIME


【パーソネル】

J.J.JOHNSON (tb) AL GREY (tb) KENNY BARRON (p,keyboard)
RAY BROWN (b) MICKEY ROKER (ds) DAVE CAREY (perc)
【収録曲】

(01-03) SOFT WINDS / LET ME SEE / SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
(04-06) IT'S ONLY A PAPER MOON / BOY MEETS HORN / THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE
(07-08) THINGS ARE GETTING BETTER ALL THE TIME / DONCHA HEAR ME CALLIN' TO YA
【解説】 ( 2015年10月18日更新 / 連載 1,184回 )

 いやあ、3連休でしたなぁ。 土曜日だけ、ほんのちょっとしたプチ仕事が入ってしまったんですが、その2日ほど前に某市役所の支所の地下にある非常用発電機の修理をしたんっすよね。 燃料計が壊れたので、直して欲しい。 そういう依頼だったんですが、 「わかりやした!」 と安請け合いすると、大ハマリするんですよね、これがまた。 …という経験を、かつてしたことがある僕としては、ここは慎重にならざるを得ません。 ンなもん、1時間もあれば終わるやろ。 そう踏んで、余った時間をどこでどのようにして過ごそうか、あれこれと思案していたんですが、いざやろうとしたら全然うまくいかなくて、半泣きになっちゃったんすよね。 燃料というのは外から見えるメーターの部分と、タンクの中に入っているフロートセンサーの組み合わせで構成されているんですが、前者のほうは楽勝。 電気の配線を間違えて、バチっとショートさせたりさえしなければ、ものの20分で交換出来ちゃいます。 問題は後者のほう。 開けっぴろげな燃料タンクであれば、何の問題も無いんですが、某・三菱重○業製のパッケージ発電機の場合、タンクの回りがぐるりと鉄板で囲まれているんですよね。 給油口の上のところに小さな開口があって、そこから何とか腕を突っ込むことは出来るんですが、肝心のフロートスイッチは奥のほうにあったりして、どないせえちゅうねん! そう思わずにはいられない構造になっていたりします。 言葉では説明しにくいので、イメージ図を書いてみると、こんな感じ。

燃料計フロート取替イメージ図♪


 外から見た限りでは下図のように真っ黒だったりするんですが、それをユリ・ゲラーに頼んで透視して貰うと、上図のような感じになっていたりします。 ちなみにこれ、手首から先はサバ君の手の実写だったりするんですが、根元の部分を画像の切り貼りで無理矢理に付け足した結果、かなりキモい色合いになっちゃいましたな。 壊死してね? そう思われるかも知れませんが、壊死ではなく、絵師の実力の無さによるものなので、ご心配なく。 で、このフロート、取り付け部が円盤状になっていて、ネジでタンクの上に固定するようになっているんですが、ご丁寧にネジが5本もあったりします。 開口部はギリギリ腕が1本入るくらいの大きさしかなくて、何と言うんでしたっけ? 脚で言うところの 「ふくらはぎ」 に相当する部分。 二の腕ではなくて、一の腕のほう? そこの筋肉の膨らみが引っ掛かってしまって、ぜんぜん奥まで手が届きません。 リストカット…というか、一の腕カット覚悟で頑張ってみても、何とかぎりぎり指の先がいちばん向こうのネジの頭に届くという感じ。 こんなん、どうやってネジを緩めろちゅうねん!? しかも、ユリ・ゲラーに頼まない限り、中の様子がぜんぜん見えなかったりするので、その作業をすべて手探りでやらなければなりません。 無理っ! 普通の人なら即座に投げ出しちゃうところなんでしょうが、サバ君は違います。 負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じ抜くこと、駄目になりそうなとき、それが一番大事〜♪ 透視なんかに負けねぇ! そう闘志を燃やして、ここはひとつ、文明の利器というのを活用してみようではありませんかぁ。 ということで、Webカメラを購入。 それをノートパソコンに繋いで、リアルタイムで映像を見ながら作業すればいいんじゃね? そんな画期的な方法を思い付きました。 今回、助手役として若手のホープのジャパネットくん (仮名) を連れて行くことにしたんですが、「サバさん、凄いっすね!」 そう尊敬されること、請け合い。 「いやあ、それほどでも。」 そんな謙遜の台詞まで用意していたんですが、結果的にこの画期的なシステムが稼働されることはありませんでした。 燃料タンクを囲っている鉄板の前面には、計器類が付いた箱みたいなのがあったりするんですが、それを取り外してみた結果、フロートスイッチと燃料計のメータを繋ぐケーブルを通す為の穴があることを発見。 そこから、ちょうどいい感じにフロートの取付部が見えることが判明したんですが、やっぱり覗きは肉眼が一番だねっ♪

 ということで、作業開始〜。 普通のドライバーではどう足掻いても…というか、どう腕掻いても無理っぽいので、ここで文明の利器 (その2) を投入。 ラチェット式のボックスレンチの先にドライバーのビットを取り付けられるヤツ〜♪ ( ← ドラえもんの秘密道具、大山のぶ代の声で。) 正式には何と言う名前の道具なのか知りませんが、 こんな感じのヤツ でありますな。 ラチェット機構によって回転方向が一方向に制限され、逆回転させると空回りするため、ボルトやナットを素早くしめることができる。 そういうアレだったりするので、いちいち緩める度に持ち替えなくてもよくて、とっても便利♪ ハンドルの長さの分だけ奥のほうまで突っ込めるので、これなら何とかネジを緩めることが出来そうですな。 で、実際にやってみたところ、おお、イケるやんっ! これで何とか5本のネジを緩める目処が立ちました。 問題はフロートスイッチを取り替えた後に、果たしてうまくネジを締めることが出来るかどうかなんですが、ま、そんな先のことを今からあれやこれやと思い悩んでも仕方が無いしぃ。 とりあえず古いフロートを取り外した時点で、投げ出す。 そういう選択肢もありますよね。 どうせ壊れて燃料計が動かないんだから、フロートがあろうと、無かろうと、一緒や! 例えばエベレストの登山なんかでも、頂上に到着したのかどうかが重要なのであって、降りるほうはさほどでもなかったりしますよね。 下山途中に遭難してお亡くなりになったとしても、登頂に成功した! そう、胸を張って言うことが出来ます。 つまりまあ、古いフロートの取り外し成功も、それに匹敵する偉業であると言えようかと思うんですが、ただ、そうこうしているうちに、次第にそれすら危うくなって来ちゃいました。 ネジがまだ固いうちは、ちゃんとラチェット機能が働いてくれるんですが、緩んでくるにつれて、次第にちゃんとラチェってくれなくなっちゃうんですよね。 反時計方向に回すとネジが緩んで、時計方向に回すと、優しさはいつも僕の前でカラカラ、空回り。 おお、順子♪  それが正しい姿なんですが、そのうち、反時計方向に回すとネジが緩んで、時計方向に回すとネジが締まる。 そういう状況になっちゃいます。 「こりゃ、アカンな…。」 僕はぶつぶつと独り言を呟くしか手立てがなかったんですが、果たしてどうしたものか、うーん…。

 いろいろと思い悩んだ挙げ句、文明の利器 (その3) の投入を決意したんですが、 ネジザウルス ぅ〜♪ もう、これのお世話になるしかありませんかねぇ。 本来はネジ山が潰れてしまった場合に使う道具なんですが、緩んだネジならもっと簡単になんとかなるかも…? で、やってみた結果、横に咥えて回すのも、縦に咥えて回すのも、どちらもなかなか難しいものがあったんですが、斜め45度くらいでやってみれば、何とかならないこともないな。 そんな気がしないでもなくて、で、めっちゃ頑張って地道にチャレンジした結果、遂に1本のネジを外すことに成功! おお、やったぁ♪ その勢いに乗って、2本目もクリア。 ここまで来ればもう、先は見えたも同然なんですが、この時点で僕の腕は限界に達しておりました。 一の腕の筋肉の盛り上がりのところがリスカ痕みたいになってしまって、もう限界。。。 若手のホープのジャパネットくん (仮名) に後を託すしかありませんが、「これ (ラチェット) では無理やで、これ (ネジザウルス) を使って。 」 そう、ボソボソと小さな声で指示を出したところ、 「わかりました!」 と、頼もしい返事が。 これでもう、僕の仕事は終わったも同然でありますなぁ。 この調子なら、ネジを締めるほうも作業もヒョイヒョイとやってくれちゃうに違いありません。 すっかり安心モードで 「ふぅ。」 と息をついて、何だか腫れているような気がする一の腕の筋肉をさすりながら、ジャパネットくんの仕事っぷりを見ていたんですが、そして数分後に、ぼそっと一言。 「あのぉ…、これ、無理っぽいですけど、どうやってやるんっすかぁ?」 その手を見ると、しっかりとラチェットが握られております。 だーかーらぁ! それでは無理って言うたやんっ! これ (ネジザウルス) 使えっていうたやん! 「ああ!」 で、結局、5本ともぜんぶ自分で緩めて外したんですが、この助手の手、何の助けにもならねぇ。。。

 で、無事、フロートをタンクから取り外すことに成功して、いよいよ今度は取付の部でありますな。 あまり多くは期待出来そうにない助手クンを、 「弁当買ってこーい!」 とパシらせて、その間に自力で何とかすることにしました。 5本あるネジのうち、ま、最悪、1本だけでも嵌まればいっかぁ。 どうせ外からは見えないところだしぃ。 そう、目標を低いところに設定したので、わりと気が楽だったんですが、いろいろ試行錯誤を重ねた末に、かなりイケそうな方法を編み出しました。 ラチェットハンドルとドライバーのビットは中間ジョイントで接続するようになっているんですが、そのジョイントにビットをはめて、ネジをセットして、軽くビニールテープを巻いて、落ちないように固定。 その状態で開口から腕を突っ込んで、クルクルと回す。 ネジ山に掛かって、外れないようになったらラチェットハンドルを取り付けて、くるくると回す。 カチッとロックされるところまで押し込まずに、先っちょだけジョイントの穴に突っ込んで、抜き差ししながら回すというのがポイントなんですが、言葉で説明するのが難しいっすな。 仕方が無いので、ちょっとイメージ動画を撮ってみますかね?

   『 完璧!ネジ締めテクニック 』  ( ← Click Here!! )

   左クリックして、開くなり、保存するなりして、ちゃんと見られるかどうかは知りませんが、見られた人なら、何となく僕が言っている意味が分かって貰えたのではなかろうかと。 何でもいいけど下手くそ過ぎて、見ていてめっちゃイライラしますな、このネジ締め男の仕事っぷり。 ある程度までネジが入ったら、カチッとロックして普通に回してやればいいんですが、なかなか思うようにラチェってくれなくて、苦労している様子がよく窺えるのではなかろうかと。 というかコイツ、あまりにもフニャフニャ過ぎて、情けねぇ。。。 そこのところが問題であるような気がするんですが、もっとシャキっと立ってくれれば作業もしやすいんですけどねぇ。 で、何とか締め切ることが出来たら、引っ張ってテープを剥がしてやればオーケーなんですが、最初にあまりしっかりとテープで固定し過ぎると、この段階で泣きを見ることになるので、注意が必要です。緊縛は、ほどほどに。 とまあ、そんなこんなで、何とか1本目のネジを締めることに成功。 この調子で2本、3本…と、順調にミッションをクリアしていきます。 で、こうなってくると、欲が出て来ますよね。 最悪、1本だけでも締まればいっかぁ。 そんな低レベルな目標を設定していた自分が恥ずかしくなって来ちゃいます。 ここでヤメておけば、次に取り替える時にちょっと楽が出来るんですが、そんなの知ったこっちゃねぇ!! 単なる自己満足と言われようと、俺は5本のネジをすべて締めてやるぜ! …と、この時点でパシリが戻って来たので、一時、作業を中断。 ゆっくりメシを食って、昼からまた、残りの2本にチャレンジでありますな。 唐揚げ弁当を食って鋭気を養って、午後から再び作業再開。 この日は16時から打ち合わせの予定が入っていて、移動やら試運転やらの時間を考えると、14時がタイムリミット。 それまでに残りのネジが締まらなかったら、諦める。 そういう方針を固めたんですが、超有能な僕は時間内に全てのネジを締めることに成功したので、ありました。 達成感、半端ねぇぇぇぇ♪

 ということで、残るは試運転確認。 電源を入れて、バチっ! …と火を噴いたりしなければ、まずは第1関門クリアなんですが、恐る恐るブレーカーを入れてみると…。

 バチィィィィン!

 そんな展開を期待していた人は多いかと思いますが、ぜんぜん大丈夫でした。 何だか地味ィに燃料計のメーターも真ん中ぐらいまで振って、とりあえず手術は成功した模様。 燃料が本当に半分しか入っていないのか、あるいは満タンなのに何かの手違いで正しく指示しないのか、どちらなのかはよく分かりませんが、とりあえず取り替える前は完全ゼロの状態だったので、それからすれば見事な復活ぶりであると言っていいのではなかろうかと。 あとは発電機が正常に運転出来れば本日の作業は終了なんですが、そっち方面で壊れるようなことは何もしていないので、僕は何の心配もしていませんでした。 で、発電機の始動ボタンを押してみたところ、う、動かん…。 セルモーターが回って、立ち上がりそうなところまではいくんですが、その後、「ぷす…ん…」と言った感じで、止まってしまいます。 マジかよ!? 何度もチャレンジしてみたんですが、やっぱり駄目。 燃料系統のエア噛みともちょっと違った感じのエンジンの掛からなさでありまして、原因不明で、うーん…。 思い当たるとすれば、アレです。 先日、燃料計不良との知らせを聞いて、現地調査を実施したんですが、その際、アースが接続されているビスを外した瞬間、バチっ! …と音がして、火花が出て、 「加速度」 とかいう故障の表示が出ちゃったんっすよね。 とりあえず 「故障復帰」 をランプを押したら表示は消えたので、火花は見なかったことにして、その場を離れてしまったんですが、考えられるとすれば、あの時、何らかの電気回路が壊れてしまって、エンジンが回らなくなってしまった。 それしかありません。 ちなみにビスを外したのはジャパネット君なんですが、僕、知ーらね。。。 で、何度かやっているうちに発電機から黒い煙がモクモクと出て来たりして、事態はますます悪化しているようにしか見えないんですが、これはもう、僕の手には負えません。 エンジン屋さんに助けを求めることにして、じゃ、僕は打ち合わせがあるから、これで! 後は若手のホープに全てを委ねて、その場を離れたのでありました。

 で、打ち合わせも終わって、どうなったかなと思って電話を入れてみたところ、排気管の目詰まりではないか? そのようなエンジン屋さんの見解が示されて、で、それを確認するために、排気管を外して、それで一度、運転をしてみたいと。 そのような話の流れになっておりました。 ただ、問題点がひとつ。 発電機が設置された部屋には火災報知器が付いているんですが、排気ガスで反応する恐れがある…と。 市役所でそんなものが動作してベルが鳴ったりしたら大騒ぎになるに違いなくて、果たしてどうしたものか…と。 そのように市役所の担当者から相談を受けたんですが、そこで、ジャパネット君が一言。 「大丈夫です。煙検知式じゃなくて熱感知式なので、働く心配はありません!」 え、何? そんなん分かるの? 聞いてみたら昔、そっち関係の仕事をしていたんだそうで、マジかよ? それは何とも心強い限りでありますなぁ。 この助手の手、何の助けにもならねぇ。。。 そんな失礼なことを言ったりして、ゴメンよ! ただ、万が一という可能性もあるので、出来れば火災報知器を取り外したい。 が、梯子がないから、今日は出来ない。 もし梯子があったとしても、極度の高所恐怖症である僕としては、出来ればそういう作業は他人に押し付けたいところなんですが、とまあそんなこんなで、排気管を外しての試運転は日を改めて、梯子を用意した上で、万が一、火災報知器が鳴っても大丈夫な土曜日にやろう。 そういう話になって、で、ほんのちょっとしたプチ仕事が入った。 そういう最初の話に戻るんですが、ということで、当日。 ジャパネット君は梯子に昇って、意図も簡単に火災報知器の取り外しに成功して、何て使える部下なんや! そんな思いを新たにした次第でありますが、後は排気管を外してエンジンを掛けてみるだけでありますな。 ただ、その成果の程は、甚だ疑問でありました。 ほんの1ヶ月ほど前までは普通に運転出来ていたのに、そんな急に排気管が詰まったりするとか、あり得ますかね? エンジン屋さんは、ほぼ間違いない。 そんな口ぶりだったんですが、僕は正直、半信半疑…というか、一信九疑くらいの割合で、その推測は間違っているんじゃないか? そのように思ったりしていました。 で、排気管を外してエンジンを始動してみたところ、見事に一発で起動。 マジかよ? で、試しに排気管を元に戻してみても普通にエンジンが掛かるようになってしまったので、今ひとつ釈然としないものはあったんですが、とりあえずまあ、結果オーライということで。 で、最後、取り外していた火災報知器をジャパネット君が元に戻そうとしたところ、

 ジリリリリリリリリリ!

 と、館内にベルが鳴り響いて、こんなことなら最初から外さないほうがよかったんじゃ? そんな気がしないもなかったんですが、とまあそんなこんなで、土曜日の仕事は思ったよりも早く片付いて、このコーナーの先週分の原稿書きも日曜日には終わって、 「体育の日」 は暇になってしまったので、じゃ、暇潰しとネタ探しを兼ねて、 明治村 にでも行ってみようかと。 で、今回、その話を書こうかと思っていたんですが、前振りだけで十分にモトが取れたので、今日のところは、おしまい♪

 ということで、今日はアル・グレイなんですが、地味っすなぁ。 ネタ用にこの人のアルバムを1枚仕入れることにしたんですが、単独ではこれといったものが見当たらなかったので、J.J.ジョンソンとの共演盤を買ってみました。 J.J.と言えばカイ・ウィンディングとのコンビが有名なんですが、カイくんは1983年5月にお亡くなりになってしまい、失意のJ.J.君が同年代のトロンボーン奏者のアル君に声を掛けて吹き込まれたのが、この 『シングス・アー・ゲッティング・ベター・オール・ザ・タイム』 である。 そういった経緯があったりするようです。 1980年代って、ジャズが超不毛の時代だったりするし、パブロというレーベルもまったくソソられるものがないし、日本で売れる要素がまったく無かったりするんですが、こうしてサバ君の目に留まって、紹介して貰えることになって、よかったじゃないっすかぁ。 ジャケットには双頭コンボの2人のリーダーが写っているんですが、左側のJ.J.君、わりと猿顔っすな。 一方、右側のアル君は気のいいオッチャンといった感じなんですが、こっちのほうが1年と5ヶ月ほど年少さんだったりする模様。 録音当時 58歳くらいで、ま、年相応っすな。 一方、J.J.君のほうは、けっこう若く見えたりするんですが、猿顔の人ってたいてい、年齢不詳みたいになっちゃいますからね。 で、リズム隊のほうはというと、ケニー・バロンレイ・ブラウンミッキー・ローカーと、なかなかの実力派が顔を揃えていたりするんですが、いいっすよね、ケニー・バロン。 毛に貼ろう、ん〜快感、サロンパス。 この一句は個人的にちょっとお気に入りだったりするんですが、俳句の題材としてはともかく、ピアノのスタイルのほうは、あまり多くは期待が持てなかったりするんですけど。 で、それにプラスしてデイブ・ケアリーという人のパーカッションが入るようですが、壁に耳あり、デイブに毛有り。 ハゲでなければ、剃毛趣味もなかったりするようなんですが、とまあそんなこんなで、演奏を聞いてみることにしましょう。

 1曲目の 「ソフト・ウインズ」 はベニー・グッドマンが書いた古いスイング・ナンバーなんっすが、いいっすよね、グッドマン。 良男っすよね、日本語にすると。 名前に反して、性格がひねくれていたという話を聞いたことがあるんですが、 ここ にもそう書かれておりますな。 紅井良男。 やっぱり、誰でもそう訳したくなっちゃいますよね。 で、演奏のほうはというと、わりと速いテンポ設定だったりするんですが、テーマ部のアレンジがちょっと凝っていて、なかなかいい感じ。 基本、トロンボーン2本のハモリですが、そこにうまくピアノとドラムスとパーカッションが絡んで来て、でもって、ソロ先発はケニー・バロン。 期待度はゼロに近いものがあったんですが、これがなかなかいい出来だったりして、で、終盤は2管のハモリが絡んで来たりして、で、以下、J.J. → アルの順でソロが披露されることになります。 ふたりがリズムによく乗って超絶的なテクニックを披露してみせる。 前半J.J.ののびやかなソロを受けて、後半はグレイがミュートをつけた好プレイを聴かせ、2本のトロンボーンによる凄まじい絡み合いになだれ込んでゆく。 そう、日本語ライナーで岡崎正通クンが書いているような展開になるんですが、2人の間に地味にベースのソロが挟まれていたりもします。 で、テーマに戻って、おしまい。 最後、リピート無しでいきなり終わっちゃうのも唐突で、悪くない演出だと思います。

 で、次。  「レット・ミー・シー」 はハリー・エディソンとカウント・ベイシーが書いたスイング・ナンバー。 え、コイツら、中間派なん? そう、ちょっと心配になっちゃいますが、演奏のほうは普通にモダンだったりするので、大丈夫。 ピアノ・トリオによるスインギーで小気味のいい演奏が続いて、やがてそこに2管が入って来て、両者の絡みでテーマが演奏されるという、そういった流れだったりするんですが、なかなかいい雰囲気でありますなぁ。 で、ソロ・パートはアレです。 J.J.が先発するが、しだいにハッピーなコーラス・チェンジへと移り、最後は両者のエキサイティングなチェースへとなだれ込む。 そういう展開だったりして、なかなかに盛り上がっております。 続くバロンのソロもよくツボを押さえていて、…とか思っていたら、フェードアウトして、おしまい。 最後がちょっとあっけなかったんですが、熱延鋼板にも負けない熱演ぶりだった。 そのように評価していいのではなかろうかと。

 ということで、次。  「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」 。 直訳すると 「柔らかに朝の日の出においてそうであるように」 となるんですが、世間ではもっぱら 「朝日のようにさわやかに」 という邦題で知られております。 ベースのピチカートによってテーマのメロディが演奏されるという、異色のアレンジが施されているんですが、地味渋いっすなぁ。 で、その後、ミュートのトロンボーンが出て来て、雰囲気が急に田舎のおっさん臭くなっちゃうんですが、こういう味を出せるのはアル・グレイ。 その人であるに違いありません。 グレイというと、 こいつ の印象が強いんですが、 『宇宙人グレイの正体は、河童だった!?』 かつて、ムーの総力特集で、そういうのがありましたなぁ。 『宇宙人グレイの正体は、河童だった!!』 そう、断言しないところがミソなんですが、あ、やっぱり違った。 後で何とでも言い逃れ出来ますからね。 逃げ道を作っておくのは賢いやり方なんですが、で、その後、J.J.が登場して、これまた、わりとテイストフルなソロを披露してくれたりしております。 テクニックは抜群なんだけど、人間味がなくて、今ひとつ面白みが無い。 それが僕のJ.J.感だったりするんですが、還暦近くになったからなのか、アルに感化されたからなのか、ここでのJ.J.はソウルが感じられる僧侶。 そういうアレだったりして、悪くないっす。 中盤は2者の絡みで大いに盛り上がって、最後はバロンが綺麗に纏めて、トロンボーンとピアノの絡みでテーマが再演されて、おしまい。 異色作であるが、遺書臭くはない。 そういった感じの 「朝さわ」 でありました。

 で、次。 これまた歌物ナンバーの 「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」 。 「それはただの紙の月に過ぎない」 って、そういう状況を歌にしたものなのか、今ひとつ意図が不明だったりするんですが、 ここ にその訳詞がありました。 抱きしめてもらってないと、まるで世界は臨時駐車場みたい。 うーん、アメリカ人の感性って、今ひとつよく分からん。。。 で、基本、この歌は “ほのぼの系” だったりするんですが、トロンボーンという楽器の持ち味とよくマッチしていて、理に適った選曲であるな。 そう評価していいのではないかと思うんですが、あまりにもスロー過ぎるテンポ設定と、あまりにもミュート過ぎるグレイのプレイは、ちょっとどうか。 そんな気がしないでもありません。 その点、J.J.君のほうは適度な知性を保ったプレイを披露してくれているんですが、で、叙情派クールなバロンのピアノ・ソロを挟んで、最後は2管の絡みで “ほのぼの” して、おしまい。 で、次。  「ボーイ・ミーツ・ホーン」 。 「少年は管と出会った」 っすかね? あまり有名な曲ではない気がするんですが、レックス・スチュアートとデューク・エリントンの共作によるナンバーで、2本のトロンボーンによるかけ合いを生かしたユーモラスなアレンジがほどこされている。 そういうアレだったりします。 基本 “ほのぼの系” なんですが、ヴァイブみたいな楽器が入っているせいか、ボビー・ハッチャーソンとグラチャン・モンカー3世の “チャー・チャン・コンビ” っぽい前衛的な雰囲気もあったりします。 少なくとも、出だしの部分だけは。 ということで、次。  「シングス・エイント・ホワット・ゼイ・ユーズド・トゥ・ビー」 。 直訳すると 「状況はかつてのそれらではありません」 となるんですが、世間ではもっぱら 「昔はよかったね」 という邦題で知られております。 爺ィの昔話を無理やり聞かされてるみたいで、ちょっと不快なんっすが、これって、こんな曲でしたっけ? もっとネチっこい、爺ィの繰り言みたいなヤツだったと記憶しているんですが、何か別のヤツとゴッチャになっちゃってるとか? いずれにしろ、ここで聞かれるのは、軽快にバウンスするスインギーなアレだったりして、J.J.とアル、それぞれが存分に持ち味を発揮したソロを披露してくれております。 その間をつなぐケニ・バロくんも極めて良好。 で、最後のほうになって、しだいに 「昔 (むか) よか」 っぽくなってきたりして、でもって、おしまい。

 で、次。 前曲と似たような単語が並んでいるんですが、アルバム・タイトル曲の 「シングス・アー・ゲッティング・ベター・オール・ザ・タイム」 。 これはアレです。 キャノンボール・アダレイのオリジナルで、前半部分だけがアルバム名になっていたりしますよね。 これ 。 曲そのものはアーシーなゴスペル調で、個人的にはあまり好きなタイプではなかったりするんですが、アル・グレイが 喜びそうではありますよね。 ケニー・バロンがエレピを弾いているのがちょっとアレなんですが、ま、当時としてはこれがナウでヤングな最先端の文明の利器だったりしたワケなので、時代の空気を感じ取って頂ければ、幸いかと。 ということで、ラストっす。  「ドンチャ・ヒア・ミー・コーリン・トゥ・ヤ」 は、ルディ・スティーブンソンが書いたナンバー。 根はギター奏者で、アルトやフルートも吹いたりしたようですが、日本ではもっぱら、ウィントン・ケリーのアルバムで、作曲者としてよく、この名前を見るよね? …というので、マニアにはそこそこ知られていたりするんですが、この曲は このアルバム で聞くことが出来ます。 うわ、古っ! 連載・第7回っすな。 この適当極まりないジャケ絵も、今から思えば凄く味があったりするんですが、文体が何だか偉そうだったりもしますよね。 この頃は僕もまだ若かったっすなぁ。 昔はよかったっすなぁ。 で、曲のほうはというと、ロック・タッチのビートをもつファンキーなナンバーで、ウイントン・ケリーやジョージ・ベンソンなどもとりあげて演奏していた。 そういうアレでありまして、ジャズ・ロックなリズムとケニー・バロンのエレピが相まって、70年代ブルーノートっぽい、独特のチープさを醸し出しております。 いや、いい意味で。 アル・グレイみたいなオッサンからすれば、ちょっとした冒険だったりするんですが、これが意外とキマっていて、ファンキーというより、ファンクな仕上がり。 貫禄のある還暦前のオッサン。 そんなアレだったりして、とまあそんなことで、今日のところは、おしまい。

【総合評価】 1980年代物だろうが、パブロ盤だろうが、そんなの関係ねぇ! そういった1枚でありました。 やや都会派アーバンな趣向にそぐわない作風のものもありましたが、バラエティに富んだ内容で、最後まで飽きさせません。 J.J.のプレイは溌溂、アル・グレイは、やや “おまぬけミュート” 偏重の嫌いはあるんですが、許容範囲内。 で、何より期待度ゼロだったケニー・バロンが意外といい出来だったりして、とまあそんなこんなで、総体的に見て、オススメ♪


INDEX
BACK NEXT